弁護士コラム

2019.06.19更新

丸ノ内線の新宿御苑前駅近くで法律事務所を運営しています、弁護士の石原です。

 

以前も、相続法(民法の第五編の相続)が改正になるというお話をいたしました。

今回は、遺産分割でもめるような大きな財産はない、とお考えの方にも関係する改正についてお話をいたします。

 

1.預貯金の取扱いについて


 

預貯金については、金融機関に被相続人が亡くなったことを伝えてしまうと、口座凍結されてしまい預金が引き出せなくなるから、葬儀費用等を遺産(相続財産)から支払おうと思っている場合は、あえて伝えずにATMから引き出すというご家族も多いと思います。

預貯金については、従前の裁判実務では、預貯金債権は相続開始(お亡くなりになったとき)に各共同相続人の相続分に応じて当然に分割され、各共同相続人は自分のものとなった債権を単独で行使できる(引き出せる)ということになっていました。

これが平成28年12月19日の最高裁判所大法廷決定により変更され、預貯金債権も遺産分割の対象に含まれ、遺産分割が終わるまで、単独柄権利行使することは出来ないことになりました。

この判例変更は、現金に近い性質を持つ財産(評価についての不確定要素が少なく、具体的な遺産分割の方法を定めるに当たっての調整に資する財産)である預貯金債権も広く遺産分割の対象とすることで、共同相続人間の実質的公平を図りやすくする趣旨です。

この判例変更によって、遺産分割が済んでいない(遺産分割未了)状態ですと、金融機関は払い戻すことは出来ないことになります。しかし、最初に書いてあるように、葬儀費用や最後にかかった病院の治療費など、すぐにでも支払わなければならないが、相続人自体にはお金が無いという場合もあります。

そこで、今回の改正では判例変更と相続人の資金需要との調整を図った制度が創設されました。

 

2.遺産分割前における預貯金払戻し制度


 

改正民法第909条の2では、「遺産に属する預貯金債権のうち、(中略)債権額の3分の1に(中略)相続分を乗じた額については、単独でその権利を行使することができる。」と規定されています。また、法務省令では、上限金額を150万円と定められました。

遺産分割の際の調整に利用するため、預貯金を遺産分割の対象に含め、一方で被相続人死亡直後の資金需要にこたえるために、預貯金の3分の1(上限150万円)までは、各共同相続人が単独で払い戻しを請求できることになります。

この制度は、令和元年7月1日から施行されます。

なお、この制度を利用して払い戻しを受けた場合、払い戻しを受けた相続人は、既に遺産の一部の分割によってその預貯金を取得したものと見なされます。

 

3.どのように請求すればいいのか


 

遺産分割前に預貯金の払い戻しを請求すらためには、銀行が預金名義人が亡くなったことや、請求者の法定相続分を把握する必要があります。

そこで、これまでの遺産である預金払い戻しをする時と同様に、被相続人の出生から亡くなるまでの戸籍と、請求者の戸籍は最低限必要になると思われます。

具体的に必要な書類などは、各銀行によって異なる場合もありますので、事前に電話で銀行にお問い合わせいただいてから窓口に行かれるのが効率的だと思います。

 

大切なご家族がお亡くなりになって、遺産分割や、葬儀費用のお支払い、今後の生活に不安がある場合は、一度当事務所までご相談にお越しください。

投稿者: 石原晋介法律事務所

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