弁護士コラム

2017.11.14更新

新宿御苑前で弁護士をしている石原です。

 

今朝、でかけにフジテレビの「とくダネ!」という情報番組で、特殊詐欺の新たな手口として、訴訟をしたという通知をハガキで送る方法が増加しているという内容を見かけました。

全て見たわけではないので、番組内容と重複しているところや、番組の主張と異なるところがあるかもしれませんがご了承ください。

 

1.詐欺を詐欺と見極めるために


 

 

詐欺の手口は、とても巧妙ですし、人の不安につけこむ手法を用いているので、自分は引っかからないと思っている人でも引っかかってしまう危険性は十分にあります。

そこで、まずは「訴訟を提起した」という詐欺に引っかからない為に、訴訟手続きの基本などをおさえておいていただくのが冷静に判断するためのコツだと思い、簡単に解説いたします。

 

2.訴訟の通知


 

訴訟は、裁判所からハガキで通知されることはありませんし、裁判所以外が通知することもありません(原告が自主的に通知する可能性はあり得ます)。

何かで訴えられた、ということは相手の主張が正当かどうかにかかわらず、出来れば人に知られたくないことですよね。

また、裁判は被告にしっかり防御・反論の機会を与えなければいけないので、通知がちゃんと届いたか、いつ届いたのか分からないハガキなどの方法ではスタートできません。

そこで、裁判所は被告に対して「特別送達」という方法を用いて通知をするのが通常です。

 

3.裁判(事件)の特定


 

裁判所は、全国各地にあります。

したがいまして、どこの裁判所で行われるか(係属する)かは、被告のために明らかにならなければなりません。

ですから、どこの裁判所かという情報がない通知は基本的には詐欺だと疑ってみるべきだと思います。

 

また、同じ裁判所で、同じ当事者の別事件が継続することもありますので、裁判一件一件に事件番号が振られます。

この事件番号には、受付の年が必ず最初につけられます。

年が変わるとまた1号から事件番号をつけていくことになっています。

 

事件番号には平成29年(ワ)第xxxx号のように、年のあとに符号がつけられます。

民事事件はカタカナ刑事事件はひらがなというように大まかに分けられ、その中で地裁で行われる通常の民事訴訟であれば(ワ)などと符号だけでどんな事件かある程度は分かるようになっています。

 

4.通知を受けたときの対応


 

訴えられた場合は、通知だけが裁判所からくるということはないですが、訴状もそれらしく作ってわざわざ書留で送ってくる詐欺が行われるかもしれませんので、今後訴えられたという通知が来てしまった人のために、どう対応すべきか簡単に私の考え方をお伝えいたします。

 

まず、どの裁判所に継続しているのかを送られてきた書類で確認してください。

どの裁判所なのかよくわからなければ詐欺の可能性があります。

 

次に、その裁判所の代表電話番号をインターネットや電話帳で確認して、電話してください。

届いた書類に書かれている電話番号だと、詐欺グループの電話の可能性があるからです。

 

裁判所に電話がつながったら、係属部、事件番号を伝えてください。

書かれている事件番号がでたらめだったりすれば、裁判所がその番号はおかしいと教えてくれるはずです。

また、実際の事件番号でも当事者名や事件名が違っていれば、そのように教えてくれるはずです。

 

ここまで間違いが内容だと、実際にあなたを被告とした裁判が継続している可能性が高いので、弁護士に今後の対応を相談してください。

裁判所は、提出期限や形式的なことは教えてくれるでしょうが、主張すべき内容などは教えてくれません。

 

5.注意事項


 

以上のように、詐欺の場合は通常の訴訟の手続きと異なる点があるので、詐欺かどうかを見極める一つのポイントとして覚えていただきたいのですが、債権者(原告)から訴訟をした(あるいはする)という通知をすることや、どのような通知をするかは自由です。

したがいまして、以上のような通常の裁判の流れと違っているような場合でも、100%詐欺だとは言えないこともあります。

判断がつかない場合は、記載された電話番号などに電話せずに是非弁護士にご相談ください。

 

 

 

投稿者: 石原晋介法律事務所

2017.11.01更新

新宿御苑前の弁護士の石原です。

 

本日、気になったニュースは、芸能人の方が薬物使用で捕まってしまった息子さんに対して、保釈させずに勾留期間反省させると決断されたという報道です。

 

 

1.保釈について


  

刑事事件で逮捕されると、検察官に送致され、検察官が更なる調べが必要だと判断した場合などに、勾留という最大20日間の身柄拘束を裁判所に求めます。検察はその間に捜査を進め、起訴・不起訴を決めます。

勾留中に起訴されると、2か月の勾留となりますが、1か月ごと更新でき、基本的にはそのまま裁判が終わるまで勾留が続くことになります。

起訴された後の勾留は、逃亡(裁判に出てこない)や証拠の隠滅、証人となる人への脅迫などを防止するために必要ではあります。

しかし、そういった危険性が低い場合や、そういったことへの抑止力が他にあれば、身柄の拘束というとても重い方法をとる必要はありません。

勾留を続けると、防御・弁護活動にも支障が出てしまいます。また、長期欠勤・欠席により解雇や退学といった社会的な制裁を受けてしまう可能性も高くなります。

 

そこで、逃亡・証拠隠滅をしないことを誓約し、それを監督する人が居て、また、約束を破った場合に経済的制裁を課すため保釈金(事案によりますが、低いときでも200万近いです)を提出させることで、一時的に身柄の拘束を解くことができます。これを保釈といいます。

保釈は、一時的に身柄の拘束を解くだけですので、無罪放免というわけではありません。裁判は行われ、実刑判決が下されると収監されてしまいます。

 

2.薬物事犯の保釈について


 

保釈期間は、逃亡等をしない為に、住む場所を届けでなければいけません。

通常は、身元引受人となってくれる家族の元へ身を寄せることが多いです。

しかし、近年薬物事犯においては、保釈期間を利用して薬物への依存からの回復をめざし、治療等を開始することが多いです。

何故このようなことをするかというと、治療開始は早ければ早いほどいいということがあります。

薬物事犯の特徴として、身体拘束や裁判中は確かに反省していて、薬物をやめよう・やめたいと思っています。しかし、裁判が終わってしまうと薬物の誘惑が勝り、結局再使用してしまい、せっかくつけてもらった執行猶予も取り消しになってしまうことが多いのです。

そこで、保釈期間の制限住居として薬物依存からの回復支援をしている【ダルク(DARC)】や、専門的治療をしてくれる病院へ入寮・入院することで、再使用を防止する方策をとろうとしています。

 

このような保釈期間の利用方法はメリットが大きいと思います。

再犯により実刑を受ける危険性を回避するという予防だけでなく、実際に反省を行動として示すことができるため、初犯の裁判における情状として大きな意味があると感じています。

 

3.反省について私が思うこと


 

 

刑事事件の被疑者・被告人は罪を認めている場合、ほとんどが反省を口にします。

全員が、心にもない反省をしているわけではありません。

ほとんどの人が、留置施設の環境や、自分がしてしまったこと、家族への迷惑などから、心から反省しているように思われます。

しかし、反省をしていても環境や状況が改善されなければ、再犯を防ぐことは難しいのも事実です。

お金が無くて窃盗をしてしまった人に、反省したからといって何もしてあげなければ、お金が無くなれば再度盗みを働いてしまうかもしれません。

薬物も同じです。反省だけでは、防げないのです。薬物は意志の力を超える力を持っているから怖いのです。

 

裁判官は、薬物の恐ろしさ、再犯率の高さをよくご存じです。

「反省している」「二度とやらない」「やめられる自信がある」

そういった被告人が、数か月後に再度裁判所に連れてこられるのを何度も見ています。

反省し、再犯しないことを誓うのであれば、保釈期間を利用して行動・環境調整を行うべきだと私は思っています。

 

私の担当した事件で、被告人の供述が薬物の怖さをとても端的に示していました。

「その時の私の思考は、『どうやって薬物を使用しようか』ということにのみ支配されていました。」

薬物使用がばれる可能性が高い状況や、ばれてしまった場合に失うものの大きさから、合理的判断ができれば使用しなかっただろうという人でしたが、結局、再度薬物に手を出してしまいました。

 

 

4.まとめ


 

ニュースになっている芸能人の方の決断を批判するわけではありませんが、私はその対応ではいずれ薬物を再使用してしまうのではないかと心配になります。

反省は、どこでもできます。

しかし、実際に約束通り再犯しないことは、留置施設で一人で考えていても難しいです。

特に、薬物事犯は薬物の依存性から難しいです。

再犯防止には家族、専門家などの力を借りて、環境整備をしていくことが重要です。

ご家族や大切な人が、薬物使用で逮捕されてしまった方は、是非弁護士と相談していただき、裁判が終わるまでに環境整備を行ってください。

 

 

投稿者: 石原晋介法律事務所

entryの検索

月別ブログ記事一覧

カテゴリ

  • 石原晋介法律事務所 Shinsuke Ishihara Law Office ■受付時間 9:00~18:00 ■定休日 土日・祝日 ■住所 東京都新宿区新宿1-20-14 サンモール第8 602号室石原晋介法律事務所 Shinsuke Ishihara Law Office ■受付時間 9:30~19:00 ■定休日 土日・祝日 ■住所 東京都新宿区新宿1-20-14 サンモール第8-602号室
  • bottom_img01.png
  • 質問・相談はこちら