よくある質問

2020.06.20更新

丸ノ内線新宿御苑前駅から徒歩2~3分の事務所で活動しています弁護士の石原です。

 

離婚後、子どもが養子縁組した場合は、養親が先に養育の義務を負うとした裁判例を紹介いたしました。

裁判例では、「養親が資力がない時の理由によって充分に扶養の義務を履行できない場合を除いて」としているため、養子縁組後も実親が養育費を支払わなければならない場合もあり得るとしています。

そこで、どのような場合に実親も養育費を負担しなければいけないのでしょうか?また、その場合に負担すべき金額はどのように計算すべきでしょうか?

 

1.養親より実親の方が高収入である場合


 

親が子に対して生活保持義務を負うのであれば、実親は子に対して自身の生活と同水準の生活をさせる義務があり、養親の収入がそのような生活をさせるのに十分でないのであれば、差額を実親が負担すべきではないかとも考えられます。

しかし、子に対する扶養義務は、第1次的に養親が負い、養親において十分に扶養義務を利用できない場合に限り、実親も扶養義務を負うべきであることから、養親より実親の方が高収入であっても、非親権者である実親にそのような差額支払を求めることは出来ないとされています。

 

2.実親が義務を負う場合


 

何をもって、養親が十分に扶養義務を履行できないとするかは、生活保護法による保護の基準が一つの目安となります。

また、子の需要、非親権者の意思等諸般の事情を総合的に勘案すべきとされています(福岡高等裁判所平成29年9月20日決定)。

実親の学歴、職業、収入や、推認される意思から、どの程度の生活をさせる意思があるか、これまでの子の生活水準の連続性も勘案することになります。

 

3.実親が負担すべき金額の検討


 

生活保護の基準により支給される生活扶助と、養親世帯の世帯収入を比較し、幾ら不足しているかを検討することになります。

その際、子どもの生活費の不足金額だけを算定すべきであるため、養親らの生活費は控除しなければなりません。

生活保護制度の保護基準では、学校外活動費が教育扶助の対象となっていませんが、諸般の事情から実親が子に対して人並みの学校外教育等を施す程度の水準の生活をさせる意思が認められるのであれば、不足する教育費等も負担すべきことになります。

 

養育費のことでお悩みの場合は、是非専門家にご相談ください。

投稿者: 石原晋介法律事務所

2020.06.12更新

丸ノ内線「新宿御苑前駅」より徒歩2~3分の事務所で活動をしています、弁護士の石原です。

 

離婚後も未成年の子どもがいる場合、養育費の支払いをしなければいけないということを、ほとんどの人はご存じだと思います。

では、離婚後に子どもが一緒に暮らしている母または父(同居親)の再婚相手と養子縁組した場合、養育費はどうなるのでしょうか?支払いを免れたり、減額を求めることができるのでしょうか?

 

1.養育費の必要性


夫婦は離婚により法的に他人同士になりますので、相手方の以後の生活について扶養義務は原則として負いません。

しかし、父母が離婚し、別々に暮らすことになっても、子どもにとって親であることに変わりはなく、親は依然として子どもに対する扶養義務を負います。

この義務は、親権者となったかどうか(現在日本では離婚すると単独親権となります)、一緒に暮らしているかどうかは関係がありません。

どの程度の義務を負うことになるのかについては、父母の離婚により、子どもの生活が苦しくなることがないように、義務者の生活レベルを下げても同程度の生活ができるようにしなければならないと言われています。

つまり、子どもが困ったときに、余裕があれば助ければいいという程度ではないとされています。

 

2.義務者が増えた場合


養育費は、親が子どもに対して負っている扶養義務だとすると、親が増えた場合はどうなるのでしょうか?

養子縁組をした場合、養親と子どもは法律上親子になりますが、実親も依然として親であることに変わりはありません。

したがって、子どもに対して扶養義務を負う者が増えたことになります。

そこで、離婚時に決めた養育費を養子縁組後も支払うべきか、養親と実親の扶養義務の順位が問題となります。

 

3.裁判所の判断(過去の審判例)


 

この点が議論された家庭裁判所の先例(札幌家庭裁判所小樽支部昭和46年11月11日審判)では、 おおよそ次のように判断しています。

「養親と実親との未成熟子に対する扶養義務の順位について、明文の規定が存しないが、養子縁組には子の養育を、扶養をも含めて全面的に引き受けるという合意が含まれている。したがって、実親との関係は扶養をも含めて一定の範囲で制限されるものと考えることができ、養親が資力がない時の理由によって充分に扶養の義務を履行できない場合を除いては、実親の扶養義務は順位において養親のそれに後れるものと解する

つまり、まずは一緒に暮らしている養親が扶養すべきであり、養親の資力が充分義務を履行できない場合は、理由によって、実親が義務を負うことになります。

この例では、養育費の支払い約束をした調停条項を取り消して、義務を免除しています。

また、その取り消しは遡及効(取消の理由が出た時点にさかのぼる)があるとされています。

 

離婚に伴う養育費や別居後の婚姻費用についてお悩みの方は、お気軽にご相談ください。

投稿者: 石原晋介法律事務所

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