弁護士コラム

2018.03.16更新

新宿御苑前で弁護士をしている石原です。

 

先日、友人との間で離婚に関する手続きの期限が話題になりましたので、いい機会だと思いまとめてみました。

 

1.離婚について


 

協議離婚の場合は、離婚届を作成し提出することで離婚できると皆さん分かりますが、裁判所の手続きである調停や裁判で離婚するときは、どのような手続きが必要なのかはご存じないと思います。

 

離婚調停は「調停において当事者間に合意が成立し、これを調書に記載したとき」に成立すると定められています(家事事件手続法268条1項)。したがって、「調停により離婚する」という内容の調停調書が作成されたら離婚は成立します。

ここで注意が必要な点は、離婚届を提出する内容の合意ができてしまった場合です。「協議離婚することとし、申立人は●月●日までに届け出る」というような内容だと、実際に離婚届を出した時が成立時ということになります。

訴訟による場合は、判決が確定したときに成立します。訴訟の途中で和解したときは、調停と同様調書にその旨記載されたときに成立します。

 

しかし、離婚の手続きはこれで終わりではありません。

裁判所から調停調書や、判決の謄本(判決のときは確定証明も必要です)を受け取り、調停成立または判決確定の日から10日以内に届け出をしなければいけません(戸籍法77条1項、63条1項)。気を付けていただきたいのは、起算日(期限の1日目)が謄本を裁判所から受け取った日ではないこと(戸籍法43条1項)、間に休日などがあってもその日も含めて計算することです。

この期間を守れないと、過料という制裁があり得ますのでお気を付けください。

謄本の取得の仕方は、裁判所の窓口で教えてくれます。戸籍届出用と伝えれば、必要事項だけ記載された省略謄本というものも選択できます。

あらかじめ申請書を作成しておきたい時は、東京家庭裁判所の「その他の申請」の案内をご参照ください。

 

2.離婚後の氏について


 

民法上は、結婚するときに氏(苗字、姓)を相手の氏に変更した人は、離婚によって結婚前の氏に戻るとされています(民法767条1項)。

しかし、長年の結婚生活で使ってきた氏や仕事上も変更してしまった氏を離婚後も使用したいこともあると思います。

その場合は、離婚から3か月以内に届け出ることによって、離婚の時(結婚中)の氏を使い続けることができます(同条2項)。

離婚成立前に、あらかじめどちらにするのか検討しておいて、離婚の届出と同時に「離婚の際に称していた氏を称する届」をしてください。また、その際は離婚届の「婚姻前の氏に戻る者の本籍」を空欄にして届出をするそうです。

 

3.子どもの入籍


 

離婚により氏が戻る人が未成年の子どもの親権者であっても、子どもの氏は自動的に変わりません。また、上記の「離婚の際に称していた氏を称する届」をしていても、戸籍上は子どもと親権者の氏が異なることになります。

そこで、結婚するときに氏を変えた親権者の戸籍に子どもを入れるためには、裁判所において「子の氏の変更許可」を得てください。

手続については東京家庭裁判所の「家事審判の申立」ページ内の「子の氏の変更許可」をご参照ください。

許可の審判が出ましたら、審判書の謄本をもらい、子どもの本籍地や親権者の住所地の市区町村役場に「入籍の届」をしてください。

この許可や届出には期限はありませんが、生活上不便があると思いますのでなるべく速やかに行ってください。

 

4.年金分割


 

今回、友人との間で話題になったのは、年金分割の期限でした。

年金分割の詳しい内容などは別の記事でご紹介します。

年金分割は、離婚成立から2年以内に実施機関に対し請求しなければなりません(厚生年金保険法78条の2第1項)。

離婚時に話し合いや調停・審判で按分割合などが決まればいいのですが、離婚後にも按分割合を巡って調停・審判で争っていると、この2年を経過してしまうこともあり得ます。

しかし、その時は年金分割の調停成立や審判確定の翌日から1か月以内に請求すれば間に合います(同法施行規則78条の3第2項)。

許可抗告や特別抗告まで争う場合は、注意が必要です。これらの手続きには審判を確定させない確定遮断効がないとされているため、まだ争っている内に上記1か月の期限が経過してしまうことになるからです。

 

5.財産分与


 

婚姻中に夫婦で築き上げた財産を離婚時に清算する必要があり、財産分与を求めることができます。

詳しい内容はこれも別の記事でご紹介します。

財産分与は、離婚から2年を過ぎると裁判所に申し立てをすることができなくなります(民法768条2項但書)。

財産分与と年金分割は、離婚後・老後の生活基盤としてとても重要なので、出来る限り離婚の申立てと同時に申し立てをするようにしてください。

 

多くの弁護士は、調停成立までは担当してくれると思いますが、その後の届出等はご本人にやってもらっていると思います。弁護士からちゃんと説明を受けない場合もあり得ますので、せっかく望む内容の調停が成立したのに期限経過で実現しない、制裁を受けたということがないように、ご注意ください。

 

離婚に関するお悩みがありましたら、当事務所までお問い合わせください。

お問い合わせフォームや、予約システムをご利用いただければ時間や休日を気にせずお問い合わせいただけます。

投稿者: 石原晋介法律事務所

2017.05.12更新

新宿・四谷で弁護士をしている石原です。

今朝の情報番組で、アメリカのYouTuberが、自分の子供に対してイタズラと称し、怒鳴ったり罵ったり酷いことをして再生回数を稼ぎ、ついには親権が剥奪されたと伝えられました。

ネット上ではかなり前から話題になっていたようですが、私は今朝この情報を知りました。

ちょうど、親権についてまとめを作ろうと思っていたため、親権が剥奪される場合などについて書いてみました。

 

1.そもそも「親権」とは?


 

 

親権というのはどういうものでしょうか?

「権」とついているので、子どもを自分のものにする権利? 親であると主張できる権利?

なんとなくイメージはできるけれど、実際にどんな内容なのか分からない方も多いのではないでしょうか。

親権に関して、民法は820条で次のように規定しています。

「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」

つまり親権とは、未成年の子を監護(監督し保護することです)・教育するために認められた権利及び義務です。

 

 

2.「親権者」は誰がなるのか?


 

 

「親権」を持つ、「親権者」になるのは、誰でしょうか?

親権者については、民法818条で次のように定められています。

「1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2  子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3  親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。」

通常は、お父さん、お母さんが親権者となって、婚姻中は夫婦で一緒に行使します。

「婚姻中は」とありますので、離婚する場合はどちらか一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。

離婚届には「未成年の子の氏名」として「夫が親権を行う子」と「妻が親権を行う子」を記載する欄があり、記入が必須となります。

 

3.「親権者」を決める基準は?


 

 

親権者をどのように定めるのか、法律で決まった基準はありません。

離婚で親権争いになったとき、弁護士である私が考えるポイントは大体次のようなものです。

(1)親の事情

子どもに対する愛情があることは当然ですが、それだけでは子どもを任せることができません。

・子どもを育てる意欲や能力、環境がどうなっているのか

・親族、友人、あるいは公的機関などの協力や援助は得られるのか

・経済状況はどうか

・親は心身ともに健康か

といった点もご本人から事情をお聞きして、相手方や裁判所にお伝えするようにしています。

(2)子どもの事情

親が親権を欲しいと思っていても、子どもの希望や事情は違うことがあります。

・子どもの年齢、性別、発育状況

・その子の兄弟姉妹はどういう状況にあるか

・現在はどういう状況で育てられているか

・子ども自身の気持ち

といった点も考慮しなければなりません。

 

よく知られているところでは、幼い子どもだとお母さんが親権者となることが多いです。

また、一方の親が家を出てしまって他方の親とだけ生活している状況では、特別な事情がない限り、離婚に際して親権者を変更することは少ないでしょう。

子どもの希望や意見というのは難しいです。

法律では、15歳以上の子は意見を聞かなければならないと定められています(家事事件手続法169条2項)

15歳未満でも、子どもの意見を聞くことはありますが、幼い子は一緒に生活している親の意見に左右されやすいですし、自分の意見というものが定まらないことも多いので、慎重に検討する必要があります。

 

 

4.どんな場合に「親権剥奪」になるの?


 

 

親権剥奪(法律では「親権喪失」といいます)となる場合には、どんな場合があるでしょうか。

民法834条は、次のように定めています。

虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」

この条文は平成23年に内容が変わったのですが、以前の「親権の濫用」「不行跡」とは異なり、親権者に非難されるべき事情があることは、必ずしも必要ではなくなりました。

・親権者が子供を虐待、ネグレクトしている

・親権者が子供の財産を、親権者自身のために浪費している

などが親権喪失に当たりえます。

もっとも、過去に育児放棄をしていたとしても、現在は心を入れ替えて愛情を持って監護・養育している場合は、過去の行為だけを理由に親権喪失となることはないでしょう。

 

5.まとめ


 

 

親権というものは、あくまでも未成熟な子どもを育てるという、子どもの利益のために親などに認められた権利であり、義務であります。

ですから、親権者を誰にするかは、本当に子どもの利益になるかを様々な角度から検討し、決めなければなりません。

一緒に子どもと生活したいから、成長を間近で見ていたいからという、親の希望だけで親権者を決めることは、避けたほうがいいでしょう。

一度決めた親権者も、子どもの利益を損なう場合は、変更されたり、喪失・停止という事態になることもあります。

今回の騒動のように、子どもをお金儲けの道具のように扱い、虐待のような動画を世界的に公開することは、残念ながら親権喪失に値する行為と評価されても仕方がないと思います。

 

親権についてお悩みの場合は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 石原晋介法律事務所

entryの検索

月別ブログ記事一覧

カテゴリ

  • 石原晋介法律事務所 Shinsuke Ishihara Law Office ■受付時間 9:00~18:00 ■定休日 土日・祝日 ■住所 東京都新宿区新宿1-20-14 サンモール第8 602号室石原晋介法律事務所 Shinsuke Ishihara Law Office ■受付時間 9:30~19:00 ■定休日 土日・祝日 ■住所 東京都新宿区新宿1-20-14 サンモール第8-602号室
  • bottom_img01.png
  • 質問・相談はこちら