弁護士コラム

2017.05.12更新

新宿・四谷で弁護士をしている石原です。

今朝の情報番組で、アメリカのYouTuberが、自分の子供に対してイタズラと称し、怒鳴ったり罵ったり酷いことをして再生回数を稼ぎ、ついには親権が剥奪されたと伝えられました。

ネット上ではかなり前から話題になっていたようですが、私は今朝この情報を知りました。

ちょうど、親権についてまとめを作ろうと思っていたため、親権が剥奪される場合などについて書いてみました。

 

1.そもそも「親権」とは?


 

 

親権というのはどういうものでしょうか?

「権」とついているので、子どもを自分のものにする権利? 親であると主張できる権利?

なんとなくイメージはできるけれど、実際にどんな内容なのか分からない方も多いのではないでしょうか。

親権に関して、民法は820条で次のように規定しています。

「親権を行う者は、子の利益のために子の監護及び教育をする権利を有し、義務を負う。」

つまり親権とは、未成年の子を監護(監督し保護することです)・教育するために認められた権利及び義務です。

 

 

2.「親権者」は誰がなるのか?


 

 

「親権」を持つ、「親権者」になるのは、誰でしょうか?

親権者については、民法818条で次のように定められています。

「1 成年に達しない子は、父母の親権に服する。
2  子が養子であるときは、養親の親権に服する。
3  親権は、父母の婚姻中は、父母が共同して行う。ただし、父母の一方が親権を行うことができないときは、他の一方が行う。」

通常は、お父さん、お母さんが親権者となって、婚姻中は夫婦で一緒に行使します。

「婚姻中は」とありますので、離婚する場合はどちらか一方を親権者と定めなければなりません(民法819条1項)。

離婚届には「未成年の子の氏名」として「夫が親権を行う子」と「妻が親権を行う子」を記載する欄があり、記入が必須となります。

 

3.「親権者」を決める基準は?


 

 

親権者をどのように定めるのか、法律で決まった基準はありません。

離婚で親権争いになったとき、弁護士である私が考えるポイントは大体次のようなものです。

(1)親の事情

子どもに対する愛情があることは当然ですが、それだけでは子どもを任せることができません。

・子どもを育てる意欲や能力、環境がどうなっているのか

・親族、友人、あるいは公的機関などの協力や援助は得られるのか

・経済状況はどうか

・親は心身ともに健康か

といった点もご本人から事情をお聞きして、相手方や裁判所にお伝えするようにしています。

(2)子どもの事情

親が親権を欲しいと思っていても、子どもの希望や事情は違うことがあります。

・子どもの年齢、性別、発育状況

・その子の兄弟姉妹はどういう状況にあるか

・現在はどういう状況で育てられているか

・子ども自身の気持ち

といった点も考慮しなければなりません。

 

よく知られているところでは、幼い子どもだとお母さんが親権者となることが多いです。

また、一方の親が家を出てしまって他方の親とだけ生活している状況では、特別な事情がない限り、離婚に際して親権者を変更することは少ないでしょう。

子どもの希望や意見というのは難しいです。

法律では、15歳以上の子は意見を聞かなければならないと定められています(家事事件手続法169条2項)

15歳未満でも、子どもの意見を聞くことはありますが、幼い子は一緒に生活している親の意見に左右されやすいですし、自分の意見というものが定まらないことも多いので、慎重に検討する必要があります。

 

 

4.どんな場合に「親権剥奪」になるの?


 

 

親権剥奪(法律では「親権喪失」といいます)となる場合には、どんな場合があるでしょうか。

民法834条は、次のように定めています。

虐待又は悪意の遺棄があるときその他父又は母による親権の行使が著しく困難又は不適当であることにより子の利益を著しく害するとき」

この条文は平成23年に内容が変わったのですが、以前の「親権の濫用」「不行跡」とは異なり、親権者に非難されるべき事情があることは、必ずしも必要ではなくなりました。

・親権者が子供を虐待、ネグレクトしている

・親権者が子供の財産を、親権者自身のために浪費している

などが親権喪失に当たりえます。

もっとも、過去に育児放棄をしていたとしても、現在は心を入れ替えて愛情を持って監護・養育している場合は、過去の行為だけを理由に親権喪失となることはないでしょう。

 

5.まとめ


 

 

親権というものは、あくまでも未成熟な子どもを育てるという、子どもの利益のために親などに認められた権利であり、義務であります。

ですから、親権者を誰にするかは、本当に子どもの利益になるかを様々な角度から検討し、決めなければなりません。

一緒に子どもと生活したいから、成長を間近で見ていたいからという、親の希望だけで親権者を決めることは、避けたほうがいいでしょう。

一度決めた親権者も、子どもの利益を損なう場合は、変更されたり、喪失・停止という事態になることもあります。

今回の騒動のように、子どもをお金儲けの道具のように扱い、虐待のような動画を世界的に公開することは、残念ながら親権喪失に値する行為と評価されても仕方がないと思います。

 

親権についてお悩みの場合は、当事務所までお気軽にお問い合わせください。

投稿者: 石原晋介法律事務所

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